チームAsiaの可能性に触れた日々
6th, April 2018 MDRS time
河村信(クルージャーナリスト) Makoto Kawamura – crew journalist
本日Sol 13の昼下がり、その時はやってきました。
ヘルメットを外すと視界に飛び込んできた、曇りのない視界。
その瞬間・「終わった」というよりも「戻って来た」と感じたこの2週間。
ここまでの解放感に包まれたのは、何とも不思議なものです。
重力が3分の1だった訳ではありません。
全ての食事が宇宙食だった訳でもありません。
それでも「火星」という空間が砂漠の真ん中に突如として出現したのは、
Crew191が、どこまでも真剣に「火星」に取り組んでいたからではないでしょうか。
生身の体で外に出てしまえば、水や食料や電気を普段のように使えば、
火星の「魔法」はたちどころに解けてしまいます。でもそれが2週間・解けなかった。
恐らく誰一人として、「でもここ地球だよね」と思う暇もなく、時間は過ぎていきました。
思い返せば、密度の濃い2週間だったと思います。
誤解を恐れずに言えば、MDRSでの時間は、火星という空間を目指す「練習」です。
しかし、スポーツに例えれば、「練習」に真剣に取り組み、結果を出せないチームが
「試合」で結果を出すことはあり得ません。
今回Crew191・チームアジアは、「試合」すなわち本当の火星でも結果を出すポテンシャルを秘めたチームだったのではないかと思うのです。
Sol8の夜、それは起こりました。
エンジニアチェックで発覚した、タンクの水の「汚れ」。
この問題を解決しなければ前に進めない状況に、私たちは陥りました。
汚れを承知でSIMを続けるか、安全を優先して一旦SIMを打ち切るか。
ここを火星だとするならば、地球の支援を長くは受けられないのだから、水質にこだわらずにSIMを続けようというクルーもいました。安全を最優先して、SIMを打ち切ろうというクルーもいました。どちらの意見も、正解だったと思います。そして、最終的には、SIMを続けながら水を綺麗にするという、もうひとつの正解をCrew全員で思案し、捻り出しました。これは、タンクの水の入れ替え時に気付いた僅かな変化を見逃さなかったことが、解決につながりました。
アジア人は、細かな部分に気付き、こだわり、突き詰め、そして解決します。
その一方で、相手への相互理解などでは、寛容さも持ち合わせます。
「みんな違ってみんないい」という言葉に代表されるように、
仲間への気遣いや手助けにおいては多様性を認め合いながらチームを作ることが出来ます。気が付けば、Crew191は自然にそれぞれの役割を持ったチームになっていました。
そしてシミュレーションに本気だったからこそ、真剣に話し合い、解決を導き出すというプロセスを踏むことが出来たのだと思います。今回示した、シミュレーションに妥協なく取り組める姿勢は、「本番」であっても力を発揮できるということだと思います。
このCrewの一員で良かった。
今回・Crew191が織りなすSIMを描くために沢山のカメラを用意しました。
2週間という期間中、その現場と格闘し、気が付くと写真や映像は膨大なものになっていました。地球に、日本に帰り、その記録ひとつひとつに向き合いながら、ジャーナリストが火星で果たす役割を探していきたいと思います。